12月1日からの連邦民事訴訟規則の変更による原告主張要件とE-ディスカバリーへの影響 

12月1日からの連邦民事訴訟規則(Federal Rules of Civil Procedure)の変更により、特許侵害訴訟における特に原告主張要件(pleading requirements)、およびディスカバリー手続きへの影響が見られます。とりわけ、最も著しい変更は、(1)特許侵害事件における原告主張書面(pleadings)で特殊性(詳細な理由)のレベルの基準を設定してきた、いわゆる「フォーム18」を削除し、(2) ディスカバリー要求が各事件の状況において「均衡である」ことを義務付けることになります。

Atlantic Corp. v. Twombly事件(550 U.S. 544 (2007))の判決およびAshcroft v. Iqbal事件(556 U.S. 662 (2009))の判決では、米国最高裁判所は、特殊性(詳細な理由)が、連邦規則の原告主張の基準(notice pleading standard)に基づき従来当該基準を満たすとされたものより、民事訴訟における原告側の最初の申し立てに更に義務付けられるとしました。実際、 Iqbal事件とTwombly事件は、単なる貧弱な侵害主張以上のものとなる原告主張書面(pleadings)にて事実詳細のレベルを義務付けるため、特許誘引侵害事件の観点において適用されました。しかし、2012年、米国連邦巡回区控訴裁判所は、「フォーム18」が、直接侵害を主張する訴状について判決が下される基準であると確認しました。 R+L Carriers, Inc. v. DriverTech LLC事件(681 F.3d 1323, 1334 (Fed. Cir. 2012))とK-Tech Telecommunications, Inc. v. Time Warner Cable, Inc.事件(714 F.3d 1277 (Fed. Cir. 2013))を参照のこと。今までは、「フォーム18」に基づき、特許番号の提示と被疑侵害品の指摘のみで充分でした。しかし、12月1日付けの変更に基づき、特定の記入用紙への依拠を許可する規則が廃止となったため、「フォーム18」に遵守するだけでは、充分でなくなりました。その代わり、Twombly事件とIqbal事件に従い、全特許侵害訴状には、侵害主張が「信頼できる(plausible)」ことを証明するため、充分な事実詳細を含める必要があります。

また、ディスカバリー要求が当事者の主張もしくは弁護に関連している必要があるだけではなく、当該要求が「事件の必要性に均衡している」必要があることを示すため、規則26が改正されました。改正規則26(b)(1)に基づき、ディスカバリーが均衡しているかどうか判断する際に検討すべき要因には、(1) 対象問題点の重要性、(2) 争点に対する金額、(3) 当事者による関連情報へのアクセスの度合い、(4) 当事者の資源、(5) 係争解決におけるディスカバリーの重要性、(6) 利点と比較した負担および経費が含まれます。

その他の著しい変更には次の事項が含まれます:

  • 訴状提出後の送達の期間限定は、120日から90日へと短縮される
    (規則4(m));
  • 日程命令(Scheduling Order)の発行期間は、被告に訴状が送達されてから120日から90日へと、もしくは被告が出廷してから90日から60日へと短縮される(規則16(b)(2));
  • 裁判所への出廷命令(summons)および訴状が送達されてから21日後ならいつでも書類要求を送達することができ、規則26(f)に基づく当事者の最初の協議の後30日以内に返答を提出する必要がある(規則26(d)(2)、規則34(b)(2));
  • 提出要求に応答する当事者は、書類のコピーもしくは電子保存情報を提出すること、また「要求に記載されたとき、もしくは応答に記載の別の理屈に適ったときに」 提出を完了させることを言明する必要がある (規則34(b)(2)(B));
  • 詳細な理由を記入の上、ディスカバリーに対する異議を言明する必要があり、情報がその異議に基づき開示されていないかどうか当該異議において言明する必要がある(Rule 34(b)(2));
  • 保存されるべきであった電子保存情報が、適切な保存対策を一方の当事者が実施しなかったため、紛失もしくは破壊されてしまった場合、裁判所は、相手方当事者に対して不公平にならないように「その情報の紛失もしくは破壊による損害を取り除くのに充分な範囲を超えない程度の対策を実施するように命令することができ」、相手方当事者が情報を閲覧できないようにしたという当事者の行動が証明された場合、裁判所は、当該情報が当事者にとって不利なものであったとみなし、そのように陪審員にも指示を出し、訴訟提起の却下もしくは懈怠判決(default judgment)とすることができる(Rule 37(e))。

これらの新規則に対して、例えば、(i) 特許侵害事件において原告主張書面(pleadings)で義務付けられる特殊性(詳細な理由)のレベルと(ii) ディスカバリーの均衡性の必要性(proportionality requirement)に対して、地方裁判所ごとに異なったアプローチを取るようになると思われます。弊所では、どのようにこれらの新規則が実施されているか事件をチェックし、著しい動きが見られた場合、お知らせします。