特許侵害訴訟にて米国企業が被告である場合の裁判地に関する限定法令を認める米国最高裁判所全裁判官一致による判決 

TC Heartland LLC v. Kraft Foods Group Brands LLC事件

TC Heartland LLC v. Kraft Foods Group Brands LLC事件において、米国最高裁判所(「最高裁」)は、28 U.S.C. §1400(b)に基づき、特許侵害訴訟にて米国企業が被告である場合、どのような理由により適切な裁判地が決定されるべきであるか審議しました。特許裁判地制定法§1400(b)では、「被告が居住する(reside)、もしくは被告が侵害行為をなし、通常確立された業務を行っている場所がある裁判管轄区において、特許侵害民事訴訟を取り扱ってよい」と記載されています。最高裁全裁判官一致で、特許裁判地制定法においては、米国企業は法人組織化された州においてのみ「居住する(reside)」とされました。

本判決は、連邦巡回のほぼ30年間にわたる先例を覆したことになります。この先例では、特許裁判地に関して、被告企業が人的管轄権(personal jurisdiction)の対象となるいずれの裁判管轄区においても、被告企業が居住するとみなされていました。このような連邦巡回の解釈により、実際、被告が侵害販売をなしたいずれの場所においても、特許所有者は提訴することが可能であるとされていました。しかし、今回の最高裁の判決により、米国企業が法人組織化された、もしくは米国企業が「侵害行為をなし、通常確立された業務を行っている場所がある」州においてのみ、米国企業を特許侵害で提訴することができるとして裁判地が限定されています。このため、テキサス州東部地区地方裁判所のように頻繁に特許所有者にとって有利であるとみなされている裁判所において、特許所有者が米国企業を自由に提訴することが従来に比べ困難となります。

しかし、最高裁は、外国企業提訴の際の裁判地の質問については、Brunette Machine Works, Ltd. v. Kockum Industries, Inc.事件、406 U.S. 706 (1972)における判決に特に言及すること以外には、意見を述べることを明確に拒否しました。この判決では、最高裁は、特許侵害でカナダ籍企業を提訴する際の裁判地は、特許裁判地制定法ではなく、(現在§1391(c)(3)に成文化されている)28 U.S.C. §1391(d)により定められるとしました。この法令では、いずれの裁判管轄区においても外国企業を提訴することができるとされています。

2017年6月27日付けスペシャルレポート「特許侵害訴訟にて米国企業が被告である場合の裁判地に関する限定法令を認める米国最高裁判所全裁判官一致による判決」を参照のこと。TC Heartland LLC v. Kraft Foods Group Brands LLC事件の詳細をご覧いただけます。

TC HEARTLAND LLC v. KRAFT FOODS GROUP BRANDS LLC事件、上訴番号16-341 (U.S. May 22, 2017)。Thomas裁判官、Roberts裁判官、Sotomayor裁判官、Kennedy裁判官、Ginsburg裁判官、Breyer裁判官、Kagan裁判官、Alito裁判官による審議。連邦巡回(Moore裁判官、Linn裁判官、Wallach裁判官)の判決を不服としての上訴。(特許裁判地)